天然ボケ
今日は札幌から十勝まで車で移動し仕事を終え、帯広空港から羽田空港まで戻ってきた。
座席は会社の経費で取っているので、もちろん普通席。
普段は、到着してから荷物を降ろし易くて出やすい通路側を予約している。
今日はクラスJに空席があって、1000円でアップグレードが出来るというので、迷わずアップグレードをした。
1番前の席が空いていたので、窓際にした。
窓際に座るのは久しぶりなので、離陸してしばらくは外を眺めていた。
飛行機から外を眺めながら、新婚旅行でプーケットに行った時の事を思い出した。
ウチの奥さんは少し天然が入っているというか、たまに突拍子もないボケをかましてくる。
その時もそうだった。
奥さんは窓際に座り、初めての海外旅行にウキウキしながら、離陸前からずっと外を見ていた。
離陸後、水平飛行になってもずっと外を見ている。
下には海しか見えないのに。
「海見るのが楽しいの?」
僕の質問に奥さんはこう答えた。
「誰か漂流してないか探してるの」
え?なに?
何を言ってるのかよくわからない。
「漂流している人がいたら助けてあげなきゃ」
こう言って窓の外を眺め続ける。いや、捜索している。
どうやら本気で言っているようだ。
仮に本当に漂流している人がいたとしても、高度1万メートルの上から見えるはずがない。
そう言っても、「そんなのわからないじゃん」と、聞く耳を持たない。
僕と同じ大学出ているし、頭が悪いわけでもないのに、なんなんだ?
その時は雲もあまりなく、海が良く見えていて、上空から見る海は、確かにあまり高度を感じないので、見えるような気がしているのも分からなくはない。
でも…
ちょっとめんどくさくなってきて、
「飛行機から下を見て人がいるかどうか分かるってことは、下から飛行機を見上げて、窓から乗ってる人が見えるってことじゃない?君、飛んでる飛行機の窓の中の人の顔見える?」
と、テキトーな説明をした。
その説明になぜか急に納得して、そんなことを言っていた自分が恥ずかしくなったようで、
「そっか、そうだよねー、見えないよね。馬鹿みたい」
と、外を見るのをようやくやめてくれた。
あれから、22年。
今でも強烈な天然ボケをかましてくれるので、娘と一緒に「ママ可愛いよねー」と笑う日々が続いている。